市民ランナーとランニング障害 その3

ランニング障害を防ぐ最大のチャンスはランニングをしていない時

こんにちはトップカイロプラクティック院長の玉村です。今回も市民ランナーとランニング障害について考えて行きたいと思います。今回は「市民ランナーと普段の生活」がテーマとなります。「普段の生活」とは日常生活での立ち方や歩き方に着目していきたいと思います。

当院の患者さんには熱心な市民ランナーの方が数多くいらっしゃいます。当院は故障したから施術に見える患者さんもいらっしゃいますし、故障を予防するためにメンテナンスのために施術に見える患者さんもいらっしゃいます。

様々な市民ランナーの患者さんを拝見していると「故障がない市民ランナー」と「慢性的な故障を抱える市民ランナー」に違いがある事が解ります。その違いはタイトルからお察しの通り「普段の生活」での立ち方や歩き方と言った日常生活での身体の使い方にあると考えております。

当然ながら「故障がない市民ランナー」は立ち方や歩き方が合理的であり、「慢性的な故障を抱える市民ランナー」は立ち方や歩き方が合理的ではないとも言えます。何を持って合理的であると判断するかは後述しますが、統計的にはこの様な結果であると考えております。

私は毎日平均すると1時間ほどランニングをしますが、当然の事ながら走っていない時間の方が1日の多くの時間を占めています。従って走っていない時間帯にどのような立ち方そして歩き方で過ごしているかによって、ランニング障害を予防する重要な要素になっているのではないかと考えています。

ランニングは当然ながら前に進んで行くシンプルなスポーツです。従ってランナーは「前に進んで行く」方向に身体をコントロールしなければなりません。これはランニングの時はもちろんですが、ランニング以外の時も「前に進んで行く」方向に身体をコントロール出来た方がランニングを効率的に行う事が出来る訳です。つまり日常生活でも常に「前に進んで行く」方向に立ち方や歩き方をコントロールする必要性があるのですね。これは「力のベクトル」のコントロールとも言えます。

市民ランナーのランニング障害の発生の幾つかの要因は、ランニングの時とランニング以外の時の「力のベクトルの乖離」にあると考えております。簡単に言うと日常生活を「前に進まない」ベクトルで過ごし、ランニングの時は「前に進んで行く」ベクトルになる事です。この2つのベクトルは180度反対のベクトルですので、ランニングの時に日常生活とは反対のベクトルで身体に負荷を掛けることで故障を起こしやすくなる訳ですね。

上記以外でランニング障害の大部分は、日常生活を「前に進まない」ベクトルで過ごし、ランニングの時も「前に進まない」ベクトルで走る事ですね。「前に進みたい」のに「前に進まない」身体の使い方をするのですからデメリットしかありません。実は「市民ランナーとランニング障害 その1」でお話しした高校時代の私がこのタイプです。「前に進みたい」けど「前に進まない」身体の使い方をしていたので「変な走り方で遅い」と言われ続けて故障だらけであったのですね。

では日常生活で「前に進んで行く」方向に力のベクトルをコントロールするにはどうすれば良いかと言う事になります。最良の方法は腰仙関節に「前に進んで行く」力のベクトルが加えられるように姿勢をコントロールすることです。腰仙関節とは骨盤の中央にある仙骨と、仙骨の上にある第5腰椎との関節ですね。

上の画像は骨盤の模型を左斜め前方から見たものですが、黄色の矢印のように仙骨上部に前下方、赤い矢印のように第5腰椎に前方の力のベクトルが加わるようにコントロールする事が重要になります。注意点としては腰仙関節に強制的に前方への力のベクトルを加える事ではありません。要は「腰を前に突き出す」訳ではないという事です。最初にコントロールすべき箇所はランニングで主導となる股関節です。つまり「股関節」をコントロールすることで結果として「腰仙関節」に前方への力のベクトルを加える訳です。これがインターナルテクニックですね。

骨盤の前傾と言う言葉がありますが、私は「股関節を回転軸として骨盤の前方への回転を伴った傾斜」と定義しています。腰仙関節に強制的に「腰を前に突き出す」ような力を加えても「結果」としては見た目は同じような姿勢になりますが、姿勢の発生機序が全く異なるために機能的には全くの別物になります。

股関節を回転軸として骨盤を前傾させて走ると推進力を体感できますが、「腰を前に突き出す」ことで「前傾」のような姿勢を作って走ると走りにくい印象となります。つまり機能的な骨盤の前傾である事が重要になる訳です。

これは上の画像のような生理的湾曲という骨格が本来持っている腰椎前湾、胸椎後湾、頸椎前湾を機能させる事にも繋がります。多くの市民ランナーの皆さんはこの「生理的湾曲」が失われた状態で走っています。湾曲が少なくフラットな骨格で生活してランニングを行っています。

ランニング障害を防ぐには筋トレ、ストレッチ、栄養、休息など様々な要素がありますが、意外と知られていないのが普段の生活の中での立ち方や歩き方の重要性です。ランニングで上手に身体を使って速く、故障なく、健康的に走りたいはずなのに、日常生活の立ち方歩き方で身体を上手に使う習慣を身に着けない事はとても勿体ない事であると考えています。