股関節の使い方の基礎 インターナルテクニック基礎編3

股関節の使い方と第5腰椎 

こんにちはトップカイロプラクティック院長の玉村です。今回はインターナルテクニック基礎編の第3回目になります。前回に引き続き今回も座学になります。なかなか実技へ進まないのですが股関節を上手に使って立つ、姿勢を良くする、歩くとなると実技の前に基礎的な知識が必要になりますのでもう少しお付き合い下さい。

股関節を上手に使ってランニングフォームの改善やパフォーマンスの向上を目指す方にとっては今回も必見です。さて前回は股関節から仙腸関節への力の伝達についてお話ししましたが、今回はさらに仙骨への力の伝達から第5腰椎への力の伝達についてお話ししたいと思います。

前回は寛骨臼の前のエリアは仙腸関節の下部へ力を伝達して、後ろのエリアは上部に力を伝達するというお話しでしたね。今回は先ず仙腸関節に力が伝達された場合の仙骨の動きから見て行きましょう。

上の画像は骨盤を左斜め前方から見たものになります。青い矢印のように寛骨臼の前のエリアから仙腸関節下部に力が伝達されると、仙骨の下部(仙骨尖)は黒い矢印のように前上方に力のベクトルが加わります。

ピンクの矢印のように寛骨臼の後ろのエリアから仙腸関節の上部に力が伝達されると、仙骨の上部(仙骨ベース)は黒い矢印のように前下方に力のベクトルが加わります。

このように寛骨臼から仙腸関節への力の伝達経路の違いによって仙骨に加わる力のベクトルは異なります。では仙骨尖に前上方、仙骨ベースに前下方への力のベクトルが加わった場合に、第5腰椎にはどの様に力が伝達されるかを見て行きましょう。

黒い矢印のように仙骨尖に前上方への力のベクトルが加わると、第5腰椎には緑の矢印のように上方への力のベクトルが加わります。これは脊柱(背骨)に対して直線的な力が加わる事を意味します

それに対して仙骨ベースに前下方への力のベクトルが加わると、第5腰椎には前方への力のベクトルが加わります。これは脊柱の生理的湾曲を作り出す力となります。今回のインターナルテクニック基礎編は、股関節を内旋することで第5腰椎に前方への力のベクトルを生み出す連動のテクニックをご紹介していきます。

生理的湾曲

生理的湾曲についても触れておきましょう。生理的湾曲とは人間の成長過程で形成される湾曲です。赤ちゃんは誕生時に一次カーブという背骨が丸まった状態で産まれます。生後3~4か月になると寝返りをして頭を持ち上げます。これによって頸椎における第一の二次カーブが形成されます。その後にハイハイや歩行をする事によって腰椎における第二の二次カーブが発生して生理的湾曲が形成されます。3歳くらいで構造的にも機能的にも合理的な生理的湾曲となりますね。

この生理的湾曲は立つ、歩く、走るという動作においては最も機能的な湾曲になります。衝撃の吸収、推進力を生み出すために数年かけて形成される湾曲ですので当然とも言えますね。しかしこの生理的湾曲は「ただ湾曲がある」状態では機能的には不十分です。第5腰椎に前方への力のベクトルが加わることで生理的湾曲は最大限に機能します。そして第5腰椎に前方への力のベクトルを加えるには股関節の「内旋」という動きになる訳ですね。

身体の連動

股関節からの身体の連動についても少し触れておきましょう。身体の連動の基礎は上の画像の3つの三角形から形成されます。青い三角形は土台となる骨盤部の三角形ですね。底辺は両側の股関節で頂点は第3腰椎になります。緑の三角形は第3腰椎から反転して第6肋骨を底辺とした逆三角形になります。これは横隔膜を中心として胸郭を安定させる三角形になります。赤い三角形は第2肋骨を底辺として後頭骨と頂点とした三角形になります。これは胸郭上部を土台として頸部と上肢(肩や腕)を安定させる三角形になります。

3つの三角形は連動します。青い三角形のバランスは緑の三角形に影響し、緑の三角形のバランスは赤の三角形に影響します。身体の状態により逆の連動もありますが、インターナルテクニック基礎編では青い三角形を土台と考えていきます。

こうして見ると土台の底辺である股関節が全身に与える影響の大きさがお解り頂けると思います。逆に言えば股関節をコントロールする事の難しさもそこにある訳です。股関節の動きを考えるには、股関節の最低限の構造、機能、連動を知っておく必要性がある訳ですね。次回は今まで3回に渡ってお話しした内容を総合してみるとどの様に見えるかについてお話ししていきたいと思います。

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